Japanische Klassiker mit Furigana
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「ダブックウ」ひょうりゅうき
「太平洋漏水孔」漂流記
小栗 虫太郎
Lesen Sie 「太平洋漏水孔」漂流記 (「ダブックウ」ひょうりゅうき) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.264 Zeichen · 37 Bildschirme
こうして三人は、ついに「太平洋漏水孔」へ引きこまれた。海が皺だっておそろしい旋回をしながら、ぐるぐるながい螺旋をえがいたのち、大漏斗の底へ落ちこむ。水は、紫檀を溶かしたような色で二十度ほど傾むき、いま水平線はとおく頭上にかかっている。その、はじめてみた濃藍の水壁は、ごうごうと唸る渦心の哮りよりも怖ろしい。
もうこれまでと、キューネはじっと観念した。いま、朝焼けをうけ血紅のように染まっているこの魔海の光景は、ただ熱気を思ってさえ焔の海のようだ。頭は茫っとなり動悸ははやく、おそらくこの舟が渦心に落ちこむまでに、三人は熱気のため死んでしまうだろう。しかしキューネは、疾い呼吸を感じながらも、じっと渦をにらんでいる。
人間には、どうなっても最後まで生きようという意識がある。それがこの時に、キューネを刺戟してきたのだ。
「どうだろう、この海はこんなことではないのか。それは、渦はもとより求心性のものだが……きっとそれにつれ、うえの空気のうごきは遠心性を帯びるだろう。つまり、くるくる中心に巻きこむ渦の方向とは反対に、うえの湿熱空気は外側へと巻いてゆく。だから、多分この湿熱帯は輪のような形でぐるりに近いところだけを巻いているのではないか。