Japanische Klassiker mit Furigana
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たろうぼう
太郎坊
幸田 露伴
Lesen Sie 太郎坊 (たろうぼう) von 幸田 露伴 (こうだろはん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.863 Zeichen · 16 Bildschirme
そこで細君は、
「ちょっとご免なさい。」
と云って座を立って退いたが、やがて鴫焼を持って来た。主人は熱いところに一箸つけて、
「豪気豪気。」
と賞翫した。
「もういいからお前もそこで御飯を食べるがいい。」
と主人は陶然とした容子で細君の労を謝して勧めた。
「はい、有り難う。」
と手短に答えたが、思わず主人の顔を見て細君はうち微笑みつつ、
「どうも大層いいお色におなりなさいましたね、まあ、まるで金太郎のようで。」
と真に可笑そうに云った。
「そうか。湯が平生に無く熱かったからナ、それで特別に利いたかも知れない。ハハハハ。」
と笑った主人は、真にはや大分とろりとしていた。が、酒呑根性で、今一盃と云わぬばかりに、猪口の底に少しばかり残っていた酒を一息に吸い乾してすぐとその猪口を細君の前に突き出した。その手はなんとなく危げであった。
細君が静かに酌をしようとしたとき、主人の手はやや顫えて徳利の口へカチンと当ったが、いかなる機会か、猪口は主人の手をスルリと脱けて縁に落ちた。はっと思うたが及ばない、見れば猪口は一つ跳って下の靴脱の石の上に打付って、大片は三ツ四ツ小片のは無数に砕けてしまった。