Japanische Klassiker mit Furigana
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かのうせいのぶんがく
夫婦善哉
織田 作之助
Lesen Sie 夫婦善哉 (かのうせいのぶんがく) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.834 Zeichen · 94 Bildschirme
「――頼み方が悪いから、用達出来ぬ」
との挨拶だった。
「――これは異なることを承る。拙者の頼み様がよろしからずとは、何をもって左様申されるか」
と、満右衛門が詰め寄ると、
「――貴方は、御主人の大切な用を頼むのに、手をお下げにならん。普通なら、両手を爾と突いて、額を下げて頼むところでしょうがな……」
と言われた。途端に、満右衛門は頭を畳に付けて、
「――田舎者の粗忽許して下され」
と、煮えくりかえる胸まで畳につけんばかりに、あやまった。
すると相手は、
「――暫く其の儘で……」
と、満右衛門の天窓の上で咳などをして、そして、言うことには、
「これで頼み方がお判りでしょうがな」
「――はア」
満右衛門は真赧になって、畳にしがみついていた。
「――ははは……。頼み方を教えて、大切な金を貸すというのは、世間には類の無いことじゃ。しかし、貴方はとも角も、御主人は見捨て難い故、まあ、お貸ししましょう。頭をお上げになって、よろしい」
満右衛門は頭を上げた咄嗟に、相手を討ち果たして、腹を切ろうと思った。が、いや、差しかかった主人の用向が大切だ、またおれの一命はこんなところで果すべきものではないと、思いかえして、堪忍をこらし、無事に其の時の用を弁じて間もなく退役し、自ら禄を離れて、住所を広島に移して斗籌を手にする身となった……。