Japanische Klassiker mit Furigana
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かのうせいのぶんがく
夫婦善哉
織田 作之助
Lesen Sie 夫婦善哉 (かのうせいのぶんがく) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.834 Zeichen · 94 Bildschirme
長屋の住人の筈のお前は、その時既にどこやら姿をくらましていた。
ひとにきけば、湯崎より逃げかえった翌日、お千鶴と一緒に、夜逃げしてしまったということだった。ここらあたりから急に悪趣味になって来た「真相をあばく」の時代がかった文章を借りていうと、
――さて、お千鶴を道連れに夜逃げをきめこんだ丹造は、流れ流れて故国の月をあとに見ながら、朝鮮の釜山に着いた。
馴れぬ風土の寒風はひとしおさすらいの身に沁み渡り、うたた脾肉の歎に耐えないのであったが、これも身から出た錆と思えば、落魄の身の誰を怨まん者もなく、南京虫と虱に悩まされ、濁酒と唐辛子を舐めずりながら、温突から温突へと放浪した。
しかし、空拳と無芸では更に成すべき術もなく、寒山日暮れてなお遠く、徒らに五里霧中に迷い尽した挙句、実姉が大邱に在るを倖い、これを訪ね身の振り方を相談した途端に、姉の亭主に、三百円の無心をされた。姉夫婦も貧乏のどん底だった。
「百円はおろか五円の金もおまへんわ」
と、わざと大阪弁をつかって、ありていに断ると、姉の亭主は、
「――そうか、そりゃ、残念だ。ここに百円あれば、ぼろい話があるんだが……」