Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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めおとぜんざい

夫婦善哉

織田 作之助

Lesen Sie 夫婦善哉 (めおとぜんざい) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.643 Zeichen · 61 Bildschirme

Aozora Bunko

避難列車の中でろくろく物も言わなかった。やっと梅田の駅に着くと、真すぐ上塩町の種吉の家へ行った。途々、電信柱に関東大震災の号外が生々しく貼られていた。

西日の当るところで天婦羅を揚げていた種吉は二人の姿を見ると、吃驚してしばらくは口も利けなんだ。日に焼けたその顔に、汗とはっきり区別のつく涙が落ちた。立ち話でだんだんに訊けば、蝶子の失踪はすぐに抱主から知らせがあり、どこにどうしていることやら、悪い男にそそのかされて売り飛ばされたのと違うやろか、生きとってくれてるんやろかと心配で夜も眠れなんだという。悪い男云々を聴き咎めて蝶子は、何はともあれ、扇子をパチパチさせて突っ立っている柳吉を「この人私の何や」と紹介した。「へい、おこしやす」種吉はそれ以上挨拶が続かず、そわそわしてろくろく顔もよう見なかった。

お辰は娘の顔を見た途端に、浴衣の袖を顔にあてた。泣き止んで、はじめて両手をついて、「このたびは娘がいろいろと……」柳吉に挨拶し、「弟の信一は尋常四年で学校へ上っとりますが、今日は、まだ退けて来とりまへんので」などと言うた。挨拶の仕様がなかったので、柳吉は天候のことなど吃り勝ちに言うた。