Japanische Klassiker mit Furigana
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うしなわれたはんしん
失われた半身
豊島 与志雄
Lesen Sie 失われた半身 (うしなわれたはんしん) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.545 Zeichen · 21 Bildschirme
寝床にはいるし……とにかく、不潔だよ。」
おれの眼には、木村栄子の磨きすました、香水の香りのしみた肌が、ちらついていた。女学生なんかとは比較にならない。
「そんなことを言えば、僕たち、男の学生だって、清潔とはいかないよ。問題は、精神だと思う。男女間の愛情にしたって、肉体を超えたところに在るんじゃないかね。」
「なあに、愛情は単に性慾の変形に過ぎない。近頃流行の言葉をかりれば、肉体が思考する、ただそれだけのことじゃないか。」
「僕はそうは思わないね。肉体は慾求はするが、思考はしない。思考するのは精神だ。その証拠には、肉体的なものには一定の限界があるが、精神的な思惟は無限に進展するよ。」
「それは抽象論だ。僕にとって最も大切なのは、現実だ。先ず現実を直視し、掘り返さなければ、いつまでたっても精神の空転に終る。」
「然し、現実を整理するのは……。」
「もう分ったよ。現実を整理するのは精神、現象を整理するのは意識、そして整理された秩序の中で、思惟は無限に進展する……感性に対する知性の優越……それもよかろう。然し僕は、僕はだね、僕たちの歯も爪も立たず、僕たちを体ごと撥ね返すようなものが、現実の中にあることを、決して見落したくない。