Japanische Klassiker mit Furigana
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しっちょうき
失蝶記
山本 周五郎
Lesen Sie 失蝶記 (しっちょうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.072 Zeichen · 44 Bildschirme
てみせる、これはおれの役だ」
杉永は口笛でも吹くように、唇をまるくつぼめ、庭のほうを見たまま考えていました。癖というものは直らないものだな、私はそう思うと、緊張した気分のほぐれるのを感じました。
「考えることはない、もうきまったことだ」と私は云いました、「帰ったらみんなにそう伝えてくれ、但し真壁の動静はおれだけではつかめない、みんなで手分けをして、いい機会があったら知らせてもらおう」
「みんなにも意見はあるだろう」と杉永がいいました、「相談したうえでもういちど来る」
杉永を送って出ながら、私は明神の滝であなたに会ったことを話しました。そのときまで、ふしぎに話す機会がなかったのです。彼はあなたから聞いて知っていたとみえ、頷きながら陰気に微笑しました。それとわかるほど、陰気な微笑だったのです。
「早く祝言をするほうがいいよ」と私は云いました、「もうあの人も二十になるんだろう、なにをぐずぐずしているんだ」
杉永は私の顔を見て、なにか云いたそうにしましたが、思い返したようすで、そのまま帰ってゆきました。
それから三日めの夕方です。母屋のほうの風呂へはいって戻ると、梓久也が訪ねて来ました。