Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.681 Zeichen · 22 Bildschirme
その理由が何んであったか、どんなに訊ねても芳江の口を開ける由もなく、強いて問えば、シクシクと泣き出すだけ、その痛々しい涙を見ると、伊予守忠弘も押して責め問う気力も無くなります。
その日の昼過ぎ、漸く心を取直した芳江に送られて、忠弘は半蔵門外の上屋敷に帰りました。
三宅坂まで行ったのは、もう夕暮。
「では、ここでお暇いたします」
高力家上屋敷の門を遠く眺めて、芳江は立ち止りました。
「悪しゅうは取計らわぬ、屋敷へ参らぬか、私のためには命の恩人のお前を、父上も憎うは思召すまい」
忠弘は未練らしく足を留めます。
「いえ、私はお屋敷の門を潜れる身分ではございません。さらばで御座います、――果敢ない御縁でございました、――でも、芳江のことを、何時までもお忘れ下さいませんように」
「何を申すのだ、お前を一人帰してなるものか、一緒に来るがよい」
「いえいえ二人はどうせ無い縁でございます」
争う二人、――大名の若君と、町の賤か女と、その不思議な図は、丁度通りかかった高力家の家来達によって掻き乱されてしまいました。
「あ、若殿」
「御無事で」
バラバラと駆け寄る人々、それを合図のように、芳江の姿は何処ともなく町の薄暗がりの中に隠れてしまいました。