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Japanische Klassiker mit Furigana

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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.830 Zeichen · 24 Bildschirme

Aozora Bunko

書き終って終りに「幽里子」と署名する代りに、なんと彼の万年筆は「南次」と署名してしまったのです。

それから十五本目を、そしてあの騒ぎのあった日から半月目には、東野南次の宛の無い手紙は、二十本目を書いているのでした。署名は相変らず「南次」と書きましたが、この時ばかりはなんのはずみか、宛名を幽里子様と書いてしまって、ハッとした心持でそれを隠しました。恐ろしい冒涜に対する自責の心持が、東野の感じ易い心をチクチクさいなみます。

ちょう度その時でした。

エレベーターの扉が開いて、部屋の前に近づく足音、それもひどく乱れ勝ちに聞えたと思うと、

「御免――あ、そ、ば――」

たえだえの声がして、バタリと物の倒れる音がするではありませんか。

驚いて飛付いた扉、力任せに引くと、部屋の中に轉げ込んだのはなんとあの青磁色の洋装――幽里子の息もたえだえの姿だったのです。

「どうしました、幽里子さん」

東野南次はそれを抱き上げると、兎も角、窓際の椅子まで運んで来ました。

「あッ痛、痛」

ひどく苦しそうです。

「何うかしましたか」

「――――」

が幽里子は返事もなく昏々として東野南次の腕に倒れるのです。