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Japanische Klassiker mit Furigana

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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.033 Zeichen · 22 Bildschirme

Aozora Bunko

笠森仙太郎が懐中に刃物を忍ばせて、皆川社長邸の奥庭に忍び込むまでにはいろいろのことがありました。笠森仙太郎の美奈子に送った恋文が、会社の掲示板に貼出されたり、仙太郎自身社長に呼出されて口汚く面罵されたり、同僚の丹波丹六にコキ使われたり、冷かされたり、そして遂に、丹波丹六がいよいよ社長の聟養子となって、美奈子嬢と結婚するという噂まで立つに至ったのです。

その日会社を首になった笠森仙太郎は、白紙の答案を出すような心持で、社長邸の奥庭に忍び込植込の蔭に身を潜めて、令嬢美奈子の部屋を、そっと覗くほど取詰めておりました。

それは笠森仙太郎が、美奈子を救った翌年の晩夏のことでした。ひどい藪蚊に攻められながらも仙太郎は、美奈子に最後の恨みを言い、そして、どうしても自分というものに一顧も与える気が無かったら、思い切って美奈子を刺し、返す刃で自分も死んでしまおうといった、世にも狂暴なことを考えながら、窓の中に展開している、甘美な情景を、ワクワクしながら眺めているのでした。

窓の中の甘美な情景というのは、申すまでもなく丹波丹六と美奈子でした。二人はやがて結婚する仲で、その関係は蜜よりも濃厚であるべき筈です。