Japanische Klassiker mit Furigana
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きぐう
奇遇
Lesen Sie 奇遇 (きぐう) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.238 Zeichen · 13 Bildschirme
してみれば女に遇っているのは、全然夢とばかりも思われない。が、夢でなければ何だと云うと、――僕も答を失してしまう。
「もし仮に夢だとすれば、僕は夢に見るよりほかに、あの家の娘を見たことはない。いや、娘がいるかどうか、それさえはっきりとは知らずにいる。が、たといその娘が、実際はこの世にいないのにしても、僕が彼女を思う心は、変る時があるとは考えられない。僕は僕の生きている限り、あの池だの葡萄棚だの緑色の鸚鵡だのと一しょに、やはり夢に見る娘の姿を懐しがらずにはいられまいと思う。僕の話と云うのは、これだけなのだ。」
「なるほど、ありふれた才子の情事ではない。」
趙生は半ば憐むように、王生の顔へ眼をやった。
「それでは君はそれ以来、一度もその家へは行かないのかい。」
「うん。一度も行った事はない。が、もう十日ばかりすると、また松江へ下る事になっている。その時渭塘を通ったら、是非あの酒旗の出ている家へ、もう一度舟を寄せて見るつもりだ。」
それから実際十日ばかりすると、王生は例の通り舟を艤して、川下の松江へ下って行った。そうして彼が帰って来た時には、――趙生を始め大勢の友人たちは、彼と一しょに舟を上った少女の美しいのに驚かされた。