Japanische Klassiker mit Furigana
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おんなとぼうし
女と帽子
豊島 与志雄
Lesen Sie 女と帽子 (おんなとぼうし) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.614 Zeichen · 33 Bildschirme
懇意な間柄で話がしにくくなってくると、やがて爆発が起ってくるものです。私は楽しみにそれを待っていましたよ。ところが、案外つまらなかった。もっとざっくばらんにいかなかったものでしょうか。
たしか、波江さんから云い出したんですね、何かふさいでいなさるようだから、気晴らしに奢ってあげようって。あの時は、まるで謎のかけあいみたいでしたよ。何をふさいでるのかと波江さんが聞くと、入用な書物を買うのに金がなくて困ってるなんて、よくもあんな出たらめが云えましたね。すると波江さんは、あなたの手に百円札を一枚にぎらしたでしょう。その謎で、波江さんは平賀さんの世話になることになったという事実が、お互いに通じ合ったんだから、呆れたもんです。それからいやにしんみりして、バーのボックスの中で、波江さんはあなたにじりじり身体を押しつけてきて、一緒に海が見たいからって……そう云うと、それが、昔、福岡の海岸の燈籠流しの晩にキスしたことを、なつかしく思い出してることになったんですね。二人でジンカクテルを飲みながら、相当センチになってましたよ。そして相当見っともなかったですよ。上べだけ元気そうな口を利きながら、本当の思いはちっとも云わずに、心は胸の底深く沈みこんでいましたね。