Japanische Klassiker mit Furigana
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このみのうつりかわり
好みの移り変り
山本 周五郎
Lesen Sie 好みの移り変り (このみのうつりかわり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.592 Zeichen · 6 Bildschirme
そのうえ、うまい物屋を捜すなどということは従来もなかったし、これからもそんな欲望はないだろう。
食事は自宅で喰べないとおちつかないし、それもかみさんの料理したものに限るのである。
たびたび書いたことだが、私は仕事場で独りぐらしをしているから、客がなければ散歩のあとざるそばを半量ほど喰べて済ませるが、客があるときはレストランかてんぷら屋か、鰻屋へでかける。だが私自身は箸をつける程度で、たいていはブドー酒かビールか水割りを啜ってごまかしてしまう。かばやきはともかく、てんぷらでも洋風料理でも、うちのかみさんの作った品のほうが、つねに、はるかにうまいからだ。これは「私の口に合う」というほうが正しいかもしれないけれども、たとえばドミグラス・ソースにしても、使えるまでには二週間ちかくかけるし、シェリーや赤ブドー酒を惜しみなく入れ、これらにもまして「うまく喰べさせよう」という愛情がこもっているからだと思われる。
戦争まえ大森に住んでいたときのことだが、駅の隣りに「ふじ屋」というフランス料理店があり、晩秋から冬にかけてフランス流の土鍋料理を自慢にしていた。或るとき野鴨の煮込みを取ったところ、ソースがドミグラスであり、私の舌にはピンとこなかった。