Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ようば

妖婆

芥川 竜之介

Lesen Sie 妖婆 (ようば) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.473 Zeichen · 73 Bildschirme

Aozora Bunko

私もそれまでには出来るだけ、知慧を絞って見る心算だから。」と、一生懸命に力をつけました。お敏は頬の涙の痕をそっと濡手拭で拭きながら、無言のまま悲しそうに頷きましたが、さて悄々根府川石から立上って、これも萎れ切った新蔵と一しょに、あの御影の狛犬の下を寂しい往来へ出ようとすると、急にまた涙がこみ上げて来たのでしょう。夜目にも美しい襟足を見せて、せつなそうにうつむきながら、「ああ、いっそ私は死んでしまいたい。」と、もう一度かすかにこう云いました。するとその途端です。さっき二羽の黒い蝶が消えた、例の電柱の根元の所に、大きな人間の眼が一つ、髣髴として浮び出したじゃありませんか。それも睫毛のない、うす青い膜がかかったような、瞳の色の濁っている、どこを見ているともつかない眼で、大きさはかれこれ三尺あまりもありましたろう。始は水の泡のようにふっと出て、それから地の上を少し離れた所へ、漂うごとくぼんやり止りましたが、たちまちそのどろりとした煤色の瞳が、斜に眥の方へ寄ったそうです。その上不思議な事には、この大きな眼が、往来を流れる闇ににじんで、朦朧とあったのに関らず、何とも云いようのない悪意の閃きを蔵しているように見えました。