Japanische Klassiker mit Furigana
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ようふんろく
妖氛録
Lesen Sie 妖氛録 (ようふんろく) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N1. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N1 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.005 Zeichen · 11 Bildschirme
陳の霊公と夏姫との間は、丁度其の頃から続いているのだから、既にかなり久しいことである。荒淫の君主に強いられて斯う成ったのではない。凡て斯うした事は、夏姫にとって、水が低きに流れるように自然に成るのである。興奮もなく、後悔もなく、唯何時の間にか成って了ったという外はない。夫の御叔は、典型的なお人よしの意気地無しであった。うすうす気付いてはいたらしかったが、さて気が付いた所で、どうなるものでもない。夏姫は、夫に済まなさを感じるでもなく、さりとて、軽蔑を感じるでもない。ただ、以前より一層心優しく夫をもてなすようになった。
或る時、霊公が朝にいて、上卿の孔寧と儀行父とに戯れ、チラリと其の衵服を見せた。媚めかしい女ものの肌着である。二人はギョッとした。孔寧も儀行父も、実は其の時、それと同じような夏姫の肌着を身に着けていたからである。霊公は知っているのだろうか? 勿論二人は、お互い同志のことを良く承知している。二人にだけ夏姫の肌着を見せた所からすれば、霊公も既に二人のことを知っているのではなかろうか? 主君の戯れに、諂諛の笑を以て応えて良いものか、どうか。二人は恐る恐る霊公の顔色を窺った。