Japanische Klassiker mit Furigana
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こをうばう
子を奪う
豊島 与志雄
Lesen Sie 子を奪う (こをうばう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.292 Zeichen · 80 Bildschirme
父の死後、瀬戸の伯父から二人の様子を、ちらと匂わせられるような機会が、よほど多くはなったけれど、その時はもう彼の生活は可なり前方に押し進んでいた。彼は兼子と結婚し、兼子を愛した。過去の罪をふり返ることは、更に罪を重ねることのように思われた。兼子は彼を許してくれた。彼も自ら自分を許した。そして今突然――幾代と兼子との申出でから半月ばかりたってはいたが、彼にとっては非常に突然の感があった――今突然、敏子と依子とが彼の前に立ち現われてきたのだった。
「どうしても子供を引取らなければいけないのですか。」と彼は云ってみた。
「まあ、何を云うのです?」と幾代は驚いた眼を見張った。「引取らなければいけないというのではありません。引取る方が万事都合よいから、こちらから向うへ相談に行ったのではありませんか。あなたは一度承知しておいて、今になって不服なんですか。」
さすがに彼も、承知した覚えがないとはいい得なかった。ただ自ら進んで相談に与らなかったまでだ。いいとも悪いとも言明しなかったまでだ。そして、今後の兼子の心をばかり気遣っていたのであった。
「だけど、考えてみると、」