Japanische Klassiker mit Furigana
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こをうばう
子を奪う
豊島 与志雄
Lesen Sie 子を奪う (こをうばう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.292 Zeichen · 80 Bildschirme
五年間父親から無視された小さな存在、眼の大きいお河童さんの子、膝を揃えてお辞儀をした子、はにかんで畳につっ伏した子、言葉の上品なおとなしい子、……その上種々のものが眼に見えてきた、小さな手、貝殼のような爪、柔い頬、香ばしい息、真白い細かい歯並、澄んだ真黒な瞳。――誰に似てるのかしら? 彼は敏子の面影を思い起そうとした。然しただ、肉感的な肉体だけしか頭に浮ばなかった。ともすれば、面長な首の細い兼子の姿が、一緒に混同されがちだった。記憶を押し進むれば進むるほど、その面影は同じ程度に遠退いて、常にぼんやりした距離に立って居た。
馬鹿! と彼は自ら自分に浴せかけた。依子の一生の運命に関することだ。そう考え直してみた。然し問題は既に決定されていた。それが最善の途らしかった。何の気もなく偶然兼子に述べた言葉だけが、更に深く掘り進められていった。依子は戸籍上私生児となってることを、彼は考えた。私生児が世の中で如何なる待遇を受けるか、それを彼は想像した。庶子の認知をして家に引取り、そして兼子と二人で愛してやったら、それは依子の生涯に光明を与えることに違いなかった。