Japanische Klassiker mit Furigana
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こをうばう
子を奪う
豊島 与志雄
Lesen Sie 子を奪う (こをうばう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.292 Zeichen · 80 Bildschirme
と瀬戸は云った。
「そうですか。」と彼は冷淡な返辞をした。
「但し条件づきでね。」
条件というのは、庶子の認知と千五百円の金とだけだった。
「簡単なことだから、私が独断で承知して置いた。お前にも異存はあるまいと思って。」
「ええ。」と答えながら、彼は瀬戸の顔を見つめた。「そんなことをとしが云ったのですか。」
「いや、永井が代理に来てからの話さ。」
彼は眉をしかめた。不意に泥の中へ足を踏み込んだような気がした。話は幾代と敏子との間の穏かなものだと、彼は考えていた。少くとも幾代が自ら出かけて行った以上は、敏子が自ら幾代へか瀬戸へか返事をする筈だと思っていた。然るに、あの下劣な永井を間に立てて瀬戸へ談判を持ち込むとは……。体のいい取引に過ぎないのだ。――彼は永井を嫌っていた。あの当事家へ談判をしに来たのも永井だった。父が向うの要求を尋ねると、子供が小学校を卒業するまで月々三十円の仕送りをしてほしいと、ただそれだけのことを切り出すのに、一時間もくどくどと饒舌り続けたそうだった。彼の行いを責むるかと思えば、敏子の方が悪いのだと云ってみたり、また其々の家ではどういうことがあったとか、それも真偽の分らない話を廻りくどく述べ立てて、遂に父の立腹を買ったのだった。