Japanische Klassiker mit Furigana
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こども・こども・こどものモスクワ
子供・子供・子供のモスクワ
宮本 百合子
Lesen Sie 子供・子供・子供のモスクワ (こども・こども・こどものモスクワ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.440 Zeichen · 33 Bildschirme
――お産の仕度にいくら貰えるの? お前さん。
と訊いた。
――誰でも月給の半分まで。……でも九ヵ月牛乳代をくれるんです。
ターニャは窓の前に立って裸の楡の木の枝々にドンドン降りつもる雪を眺めた。
――いいこと! 休暇になったら毎日毎日散歩しよう!
散歩するという動詞にターニャは我知らず複数をつかった。そしてその調子の優しさが光のように室をながれた。
彼女が、丸い体の重みで幾分踵をひくような歩きつきをしながら雪明りの室の中からそれより白い姿を消してしまうのを見送っていたエレーナが、急に背中をのばすような身ぶりをし、灰色の病衣を片手できつく自分の高い胸へかき合わせた。
――これが我らの時代だ!
エレーナの心をふかく、つよく掴んで揺っているものがある。暗い燃える眼で刺すように日本女の黒い眼を見つめていたが、やがて、
――あなた子供もったことがありますか? と低い声できいた。
――いいえ、ない。
――私はもったことがある。
――…………。
――でもそれは一九一九年、飢饉の年でね。
彼女は自分自身にむかって云うように云った。
――私を見た教授が、子供を生んで何で養うつもりかと云いました。