Japanische Klassiker mit Furigana
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こども・こども・こどものモスクワ
子供・子供・子供のモスクワ
宮本 百合子
Lesen Sie 子供・子供・子供のモスクワ (こども・こども・こどものモスクワ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.440 Zeichen · 33 Bildschirme
日本女は二人で一室に住んでいた。二年近くモスクワではそうして暮して来た。「しゃっちこばり」の、静脈の浮いた手を握ると、一人の日本女はドアの内側から外套をはずし、それを着て外へ出る仕度をした。「しゃっちこばり」は、室の中央のテーブルの傍に立ってそれを見ている。
――どうしてお出になるんですか、ちっとも貴方は邪魔なさいませんよ。それどころか、一緒に勉強出来て一層愉快ではありませんか。全く無駄な遠慮です。
どっちみち、日本女は室から出る。一時間半三ルーブリを、もう一人の日本女が最も有益に利用出来るためである。
モスクワ河が凍って、その上を絶間なく人や馬橇が通っていた。氷の穴から釣糸を垂れている者がある。黒い外套の裾からいろんな色の木綿更紗のスカートを出した女達が五六人かたまって厚い氷をわり、洗濯ものを籠から出してはゆすいでいた。何かの染色がとけて氷の中の水は緑っぽく見えた。
岸に上って見渡すと氷の上にある人間の姿はどれも黒く小さく、遠くにちらほらスケートしているものの顔だけぽっつり薔薇色である。発電所の煙突からは黒い太い煙が真直上った。
日本女は凍ったモスクワ河の景色を眺めてから、元へ戻り、或る一つの建物の入口を開けた。