Japanische Klassiker mit Furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Lesen Sie 家 (いえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 141.411 Zeichen · 285 Bildschirme
この考えは、絶望に近いようなもので有った。
「ア――」
長い溜息を吐いて、それから三吉はサッサと家の方へ帰って行った。
丁度、名倉の老人が一杯始めた時で、膳を前に据えて、手酌でちびりちびりやっていた。
「何卒御構いなく、私はこの方が勝手なんで御座いますから」
と老人は三吉に言って、自分で徳利の酒を注いだ。
お雪は勝手の方から、何か手造りのものを皿に盛って持って来た。老人の癖で、酔が廻って来ると皆なを前に置いて、自分の長い歴史を語り始める。巨万の富を積むに到るまでの経歴、遭遇した多くの艱難、一門の繁栄、隠居して以来時々試みる大旅行の話など、それに身振手真似を加えて、楽しそうに話し聞かせる。服装なぞはすこしも気に留めないような、質素な風采の人であるが、どこかに長者らしいところが具わっていた。
「復た、阿爺さんの十八番が始まった」と母も傍へ来た。
「しかし、阿爺さん」と三吉は老人の前に居て、「あの自分で御建築に成った大きな家が、火事で焼けるのを御覧なすった時は――どんな心地がしましたか」
「どんな心地もしません」老人は若い者に一歩も譲らぬという調子で言った。「あの家は――焼けるだけの運を持って来たものです――皆な、そういう風に具わって来るものです」