Japanische Klassiker mit Furigana
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かんえいぶどうかがみ
寛永武道鑑
直木 三十五
Lesen Sie 寛永武道鑑 (かんえいぶどうかがみ) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.633 Zeichen · 26 Bildschirme
「いつ――御出立になりますか、と、そればかり、毎日毎日――」
半兵衛は、妻の涙を、じっと、見つめていた。
「お帰りの時のお顔色、お出ましの時のお顔色、そればかりを見ておりまして、御留守の間には、旅仕度を、只今もこれにて、腹巻を縫うておりましたが、未練ながら、これが、今生での、お別れになるかと思いますと、生きているのも果敢なく覚えますが、然し、武士の妻として、いつでも、御出立出来るように、用意は――」
と、云って、真綿入りの肌襦袢、刺子の股引、それから立って行って、腹巻に、お守札の縫込んだのを出してきて
「首尾よく、荒木に、お打勝ち下されますよう――又、又――」
里恵の声は、顫えて、脣は痙攣していた。
「時の運にて、御不利になりましょうと、背に傷を受けず、御立派に――」
と、まで云うと、しゃくり上げて、袖の中へ、顔を包んでしまった。離れ難い、愛着の心を、武士の妻として、立派に処置している若い里恵の泣いている姿をみると、半兵衛は何故かしら、又五郎が憎くて、耐らなくなってきた。
(己が、人殺をしておいて、己の命を助かりたさに、この罪もない妹を、こんな目に逢わせ、わしをも、生死の境に置いて――)