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Japanische Klassiker mit Furigana

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てらさかきちえもんのとうぼう

寺坂吉右衛門の逃亡

直木 三十五

Lesen Sie 寺坂吉右衛門の逃亡 (てらさかきちえもんのとうぼう) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.243 Zeichen · 19 Bildschirme

Aozora Bunko

人を、馬鹿にしてやがる――)

微かに、どよめきが、聞えてきて、だんだん高くなってきた。

(やってやがらあ、吉良にだって、うんと、附人がいるんだ。斬られてしまえ、皆斬られろ――俺は、国へ戻って、後生楽に暮らすんだ。もう士は懲り懲りだ――)

人の走ってくる、足音がした。吉右衛門は、身体を引いて、小さくなった。吉良の隣りらしく、少し離れた塀の上に、大提灯が立って、人声がしていた。ちらっと、掠めて、提灯が走った。話声が、走って行った。

(さあ、この間に――)

と、思って、吉右衛門は、雪の中へ出ると

「大変だ、大変だ」

と、呟きつつ、小走りに歩き出した。行く手から、横町から、時々、人が走り出してきた。誰も、吉右衛門を怪しまなかった。川の上の、広々とした空が見える所まで出ると、何んの物音も聞えないし、人の走りもなかった。

(今夜は、宵から、死ぬことばかり考えていたが――こうして、江戸を見ると、人間、こんな面白い世の中に、生きてなけりゃ損だ。俺は、ここ一二年、侍の化物に憑かれていたんだろ。下郎の癖に、仇討などと――そして、お仕舞いまで、下郎扱いにされて――大損したぞ、畜生。