Japanische Klassiker mit Furigana
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ちいさきものへ
小さき者へ
有島 武郎
Lesen Sie 小さき者へ (ちいさきものへ) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.154 Zeichen · 21 Bildschirme
女ながらに気性の勝れて強いお前たちの母上は、私と二人だけいる場合でも泣顔などは見せた事がないといってもいい位だったのに、その時の涙は拭くあとからあとから流れ落ちた。その熱い涙はお前たちだけの尊い所有物だ。それは今は乾いてしまった。大空をわたる雲の一片となっているか、谷河の水の一滴となっているか、太洋の泡の一つとなっているか、又は思いがけない人の涙堂に貯えられているか、それは知らない。然しその熱い涙はともかくもお前たちだけの尊い所有物なのだ。
自動車のいる所に来ると、お前たちの中熱病の予後にある一人は、足の立たない為めに下女に背負われて、――一人はよちよちと歩いて、――一番末の子は母上を苦しめ過ぎるだろうという祖父母たちの心遣いから連れて来られなかった――母上を見送りに出て来ていた。お前たちの頑是ない驚きの眼は、大きな自動車にばかり向けられていた。お前たちの母上は淋しくそれを見やっていた。自動車が動き出すとお前達は女中に勧められて兵隊のように挙手の礼をした。母上は笑って軽く頭を下げていた。お前たちは母上がその瞬間から永久にお前たちを離れてしまうとは思わなかったろう。