Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうじゅうのめがね

小笠原壱岐守

佐々木 味津三

Lesen Sie 小笠原壱岐守 (ろうじゅうのめがね) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.249 Zeichen · 115 Bildschirme

Aozora Bunko

やさしいお手で縫うて貰うているうちに、どちらが先にどうなったやら、――それからあとは言わぬが花よ。この通り片袖に髪の油がしみついたと言えば大凡察しがつこうわ。どうじゃ! 千之! 未練の夢がさめたか!」

「なにっ。うぬと、あれが! あれと、うぬが! ……」

ふるえて声がつづかなかった。目である。目である。血走った目が青白い月光の中を一散に只飛んでいった。

四

勿論千之介の駈け込んでいったのはそのお長屋だった。

「いるか!」

「…………」

「どこじゃ!」

「…………」

「どこにおるか!」

叫んだつもりだったが、声になって出なかった。五体をふるわし、唇をわななかせ乍ら躍り込んでいった千之介の、血走っているその目にはっきり映ったのは、ほの暗い短檠の灯りをあび乍ら、こちらに背を見せて坐っていた妻の姿である。

髪が乱れているのだ!

針箱も側にあるのだ!

「不、不義者めがっ」

叫ぶのと抜いたのと同時だった。――シュッと血しぶきを噴きあげ飛ばして、若く美しかったその妻は一言の言葉を交わし放つひまもなく、どったりと前のめりにうっ伏した。

その血刀ひっさげたまま千之介は、隣りつづきの林田門七のお長屋目ざしつつ駈け出すと、物をも言わず躍り入りざま、そこに今別れたばかりの門七が立て膝し乍ら、灯りに油をさしていたのを見かけてあびせかけ