Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうせつ えんちょう
小説 圓朝
正岡 容
Lesen Sie 小説 圓朝 (しょうせつ えんちょう) von 正岡 容 (まさおかいるる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 163.270 Zeichen · 325 Bildschirme
「だってもう焼けてしまったっていうんですもの」
世にも寂しい顔をした。
「ド、どこがよ、どこが焼け……」
キッと相手を見守った。
「……猿若三座が」
いよいよ寂しい顔をして、
「吉原も、魚河岸も、このお江戸の豪儀なところはみんな坊主が憎けりゃ袈裟までだって、片っ端から薩摩のお侍が、焼き、焼き棄ててしまいましたとさ」
さも口惜しそうに目を湿ませた。さすがに生え抜きの江戸育ちの、憤ろしさに抜けるほど白い襟脚が止む景色なく慄えていた。折柄またパチパチパパパパパと続けざまに小銃の音が弾けてきた。そして、消えた。
「……」
黙って圓朝は唇を噛んだ。いつ迄もいつ迄もそうしたまんまでいた。胸かきむしられるような憤ろしさに、自分もまたどうにもこうにもやり切れない思い。希うことならいま籠釣瓶の鞘払って、床柱といわず、長押といわず、欄間といわず、そこらのもの片っ端から滅多斬りに斬りまくってしまいたいくらいだった。まさかにそれもできないで、ジッとこうやっている圓朝の膝頭はしきりにワナワナ慄えていた。めもけに雨が屋根を叩いてきた。それだけが唯ひとつのたよりある現実として身近に大きく聞こえていた。