Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうせつ えんちょう
小説 圓朝
正岡 容
Lesen Sie 小説 圓朝 (しょうせつ えんちょう) von 正岡 容 (まさおかいるる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 163.270 Zeichen · 325 Bildschirme
師匠は今いったような次第で到底じかに手を取ってなんか教えてくれそうもなかったから、主としてこの二人の兄弟子から丹誠の手ほどきを受けることにした。二人とも教え方の呼吸に違いはあったが、それぞれ親切に教えてくれた。次郎吉はこの二人の上に他人とおもえない情誼をおぼえた。心から、兄事した。
さるほどに――。
上野や向島や御殿山の花もいつか散りそめ、程ちかき人形町界隈の糸柳めっきり銀緑に萌え始めてきた頃、やっと次郎吉は雑魚の魚まじりながらに、師匠の描いた絵草紙の下図へ絵の具を施すくらいのことはできるようになってきた。いつ迄も忘れないだろう、師匠国芳が酔余の走り書きになる黒旋風李達が阿修羅のような立姿へ、はじめて藍と朱と墨とを彩ってゆくことができたあの瞬間の晴れがましさよ。何ともいえない恐しさ嬉しさにみっともないほどガタガタ次郎吉は筆が慄えて止まらなかった。にもかかわらず、塗りおえたとき、何にもいわずにきょうも茶碗酒を呷りながらジーッとそれを見ていた師匠は、
「次郎、お前、筋がいい」
酒で真っ赤にした目をパチパチさせながら、簡単にただこれだけいってくれた。
ハッと次郎吉はまた身が竦んだ。