Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうせつ えんちょう
小説 圓朝
正岡 容
Lesen Sie 小説 圓朝 (しょうせつ えんちょう) von 正岡 容 (まさおかいるる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 163.270 Zeichen · 325 Bildschirme
いきなり小圓太は前屈みになって掴んだ、手ごろの石を。
発矢!
「宮志多亭」と書いてあるあの招き行燈へぶっつけて、せめてもの腹いせにしようとおもったのだった。
しっかり手の中の石を握った。そして二、三度宙で振ってピューッ、あわやぶっつけようとしかけて、それもまた止めてしまった。
だって――。
巧く正面の席亭の名前のところへ当ればいいけれど、ひとつ間違って脇の芸人さんの名前の書いてあるところへ当ったら……。
何かにつけていまこの自分を引き立ててくれていておくんなさる文楽師匠のお名前へ、石をぶつけてしまうことになるではないか。ましてや破いてしまいでもしたら。
……とするとこれもできなかった。
でもやっぱりあとからあとから尽くるところしらぬ憤ろしさはこみ上げてくるばかりだった。
どうしよう、では。
どうするのだ、一体。
狂おしく心が、心にこう訊ねてきた。しばし小圓太は唇を噛んだ。招き行燈の字面をみつめて、悲しく腹立たしく立ちつくしていた。
「……」
それから小半刻もそこにそうやって立ったままでいたろうか、やがてはじめてあきらめたように向き直ると、小圓太は闇へトボトボ歩きだした。