Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうしょうしげもとのはは
少将滋幹の母
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 少将滋幹の母 (しょうしょうしげもとのはは) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 83.234 Zeichen · 160 Bildschirme
今更取返しのつかないことだ」
「でも、左大臣とも云われるお方が、本気で人妻を奪い取るようなことをなさいましょうか。昨夜のことはお戯れで、今朝はきっとお返し下さるのではございますまいか」
「そうであってくれたらよいが、………」
「何なら、お迎えの人を出して御覧になりましたら、………」
「そんなことが出来るものか。………」
国経は又すっぽりと夜着を被って、
「もうよい、彼方へ行ってくれ」
と、聞き取りにくい濁声で云った。
今になって考えれば、なるほどそれは自分の胸に正しく覚えのあることである。気狂いじみた行為ではあるが、左様なことを仕出来した心理については、自分には説明が付かないでもない。自分は昨夜の饗宴を、平素の左大臣の恩に報いる絶好の機会であると思い、出来るだけのもてなしをしたには違いなかったが、一方では、自分の力に限りがあって、到底左大臣を満足させる程の款待をなし得ないのを、耻かしくも歯痒くも感ずる念が一杯であった。自分にそう云う自責の心持、―――こんな貧弱な饗応をしたのでは相済まない、何がなもっと喜んで戴くことは、―――と云う心持があった矢先に、左大臣からあゝ云う風に云われ、剰え「物惜しみをするな」