Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やまのてのこ

山の手の子

水上 滝太郎

Lesen Sie 山の手の子 (やまのてのこ) von 水上 滝太郎 (みなかみたきたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.551 Zeichen · 31 Bildschirme

Aozora Bunko

物心つくころから私はこの陰気な家を嫌った。そして時たま乳母の背に負われて黒門を出る機会があると坂下のカラカラに乾ききった往来で、独楽廻しやメンコをする町の子を見て、自分も乳母の手を離れて、あんなに多勢の友達と一緒に遊びたいと思う心を強くするのみであった。乳母は、

「町っ子とお遊びになってはいけません」

と痩せた蒼白い顔をことさら真面目にして誡めた。なぜということはなしに私は町っ子と遊んではいけないものだと思っているほど幼なかった。そのころ私は毎晩母の懐に抱かれて、竹取の翁が見つけた小さいお姫様や、継母にいじめられる可哀そうな落窪のお話を他人事とは思わずに身にしみて、時には涙を溢して聞きながらいつかしら寝入るのであったがある晩から私は乳母に添い寝されるようになった。

「もうじき赤さんがお生まれになると、新様はお兄いさんにおなりになるのですから、お母様に甘ったれていらっしゃってはいけません」

と言い聞かされて、私は小さい赤坊の兄になるのを嬉しくは思ったが母の懐に別れなければならないことの悲しさに涙ぐまれて冷たい乳母の胸に顔を押し当てた。

間もなく母は寝所を出ない身となった。