Japanische Klassiker mit Furigana
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やまのてのこ
山の手の子
水上 滝太郎
Lesen Sie 山の手の子 (やまのてのこ) von 水上 滝太郎 (みなかみたきたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.551 Zeichen · 31 Bildschirme
けれども次第に馴れて来るとまだ見ぬ庭の木立の奥が何となく心を引くので、恐々ながらも幾年か箒目も入らずに朽敗した落葉を踏んでは、未知の国土を探究する冒険家のように、不安と好奇心で日に日に少しずつ繁った枝を潜り潜り奥深く進み入るようになった。手入れをしない古庭は植物の朽ちた匂いが充ちていた。数知れぬ羽虫は到るところに影のように飛んでいた。森閑として木下闇に枯葉を踏む自分の足音が幾度か耳を脅かした。蜘蛛の巣に顔を包まれては土蜘蛛の精を思い出して逃げかえった。しかしこうして踏み馴れた道を知らず知らずに造って私はついにわが家の庭の奥底を究めたのであった。暗緑のしめっぽい木立を抜けるとカラリと晴れた日を充分に受けて、そこはまばらに結った竹垣もいつか倒れてはいたが垣の外は打ち立てたような崖で、眼の下には坂下の町の屋根が遠くまで昼の光の中に連なっている。その果てに品川の海が真蒼に輝いていた。今まで思いもかけなかった眼新しい、広い景色を自分一人の力で見出した嬉しさに私は雨さえ降らなければ毎日一度は必ず崖の上に小さい姿を現わすようになった。そして馴れるに従って日一日と何かしら珍しい物を発見した。