Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やまぶきちょうのさつじん

山吹町の殺人

平林 初之輔

Lesen Sie 山吹町の殺人 (やまぶきちょうのさつじん) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.530 Zeichen · 37 Bildschirme

Aozora Bunko

いた。

それから、しばらくたつと冗戯(じょうだん)口の一つもきけるようになり、とうとう公休日に一度二人で日帰りで江(え)の島(しま)まで遊びに行ったこともあった。とはいえその時だって、彼は、汽車に同席したというだけで手先や膝がふれあうのさえ、不必要に用心して彼の方でさけていた位だった。

外部にあらわれた二人の関係はこんなに淡いものであったが、心の中はそうではなかった。三四郎には光子のあらゆる部分、あらゆる動作が美しく、高貴に、なみなみならぬもののようにさえ見えた。ある時の如(ごと)きは、大正軒の前まで来て、急に彼女にあうのがきまりわるくなって引き返したことすらもあった。

三四郎が大学を卒業して××省書記に採用されてからまもないある土曜日の晩であった。恰度(ちょうど)四月のことで大正軒の広間には造花の桜が一ぱい咲き乱れており、シャンデリヤは部屋一ぱいに豊満な光を投げていた。白いエプロンの襟(えり)に真鍮(しんちゅう)の番号札をつけた光子は、三四郎のそばに立って一寸(ちょっと)あたりに気をくばりながら低声(こごえ)で言った。

「妾(わたし)近いうちにここをやめようと思うの」