Japanische Klassiker mit Furigana
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やまでらのかい
山寺の怪
田中 貢太郎
Lesen Sie 山寺の怪 (やまでらのかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.147 Zeichen · 13 Bildschirme
路は凸凹がないのか、それとも籠舁の足は宙を踏んでいるのか、すこしも踏みごたえがなかった。
籠は非常な勢で進んで往った。突き切って進む風の音が耳の後のほうでびゅうびゅうと鳴った。武士は籠舁どもがどんな処をどんな容にしてやっているだろうと思って、見たくもあれば不思議にも思ったが、約束があるので眼は開けなかった。
籠に羽が生えて飛んでいるように思われて来た。風も冬の風のように冷たくなってきた。耳はその風のために裂かれているように痛かった。
「眼を開けてはならんぞ」
「そうだ、もうすぐだから」
籠舁の詞は初めと打ってかわって威厳があった。籠足はすこしもゆるまなかった。耳の後で鳴る風の音は嵐の音のように聞えてきた。武士はもう宿に著くだろうかと思った。と、籠足はぴったり停まった。
「それ著いた」
「おりるがいい」
武士は眼を開けた。同時に籠が傾いた。武士の体は下に落ちた。びっくりして夢の覚めたようになった武士は、己の体が暗い地の上に立っていることを知った。彼は手荒な籠舁の所業を怒ることも忘れて四方を見まわした。そこは大きな邸の前で、左右の長屋の武者窓の隙から燈火が処どころ漏れているのを見た。