Japanische Klassiker mit Furigana
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ぎゅうじん
山月記・李陵 他九篇
Lesen Sie 山月記・李陵 他九篇 (ぎゅうじん) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.608 Zeichen · 84 Bildschirme
何か、荒々しい悲しみに似たものが、ふっと、心の底から湧上って来るようであった。
夾竹桃の家の女
午後。風がすっかり呼吸を停めた。
薄く空一面を蔽うた雲の下で、空気は水分に飽和して重く淀んでいる。暑い。全く、どう逃れようもなく暑い。
蒸風呂にはいり過ぎたようなけだるさに、一歩一歩重い足を引摺るようにして、私は歩いて行く。足が重いのは、一週間ばかり寝付いたデング熱がまだ治り切らないせいでもある。疲れる。呼吸が詰まるようだ。
眩暈を感じて足をとどめる。道傍のウカル樹の幹に手を突いて身体を支え、目を閉じた。デングの四十度の熱に浮かされた時の・数日前の幻覚が、再び瞼の裏に現れそうな気がする。その時と同じように、目を閉じた闇の中を眩い光を放つ灼熱の白金の渦巻がぐるぐると廻り出す。いけない! と思ってすぐに目を開く。
ウカル樹の細かい葉一つそよがない。肩甲骨の下の所に汗が湧き、それが一つの玉となって背中をツーッと伝わって行くのがはっきり判る。何という静けさだろう! 村中眠っているのだろうか。人も豚も鶏も蜥蜴も、海も樹々も、咳き一つしない。
少し疲れが休まると、また歩き出す。