Japanische Klassiker mit Furigana
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ぎゅうじん
山月記・李陵 他九篇
Lesen Sie 山月記・李陵 他九篇 (ぎゅうじん) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.608 Zeichen · 84 Bildschirme
では、自分が旅立つ前に期待していた南方の至福とは、これなのだろうか? この昼寝の目醒めの快さ、珊瑚屑の上での静かな忘却と無為と休息となのだろうか?
「いや」とハッキリそれを否定するものが私の中にある。「いや、そうではない。お前が南方に期待していたものは、こんな無為と倦怠とではなかったはずだ。それは、新しい未知の環境の中に己を投出して、己の中にあってまだ己の知らないでいる力を存分に試みることだったのではないのか。更にまた、近く来るべき戦争に当然戦場として選ばれるだろうことを予想しての冒険への期待だったのではないか。」
そうだ。たしかに。それだのに、その新しい・きびしいものへの翹望は、いつか快い海軟風の中へと融け去って、今はただ夢のような安逸と怠惰とだけが、懶く怡しく何の悔も無く、私を取り囲んでいる。
「何の悔も無く? 果して、本当に、そうか?」と、また先刻の私の中の意地の悪い奴が聞く。「怠惰でも無為でも構わない。本当にお前が何の悔も無くあるならば。人工の・欧羅巴の・近代の・亡霊から完全に解放されているならばだ。ところが、実際は、何時何処にいたってお前はお前なのだ。