Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎひげへんしゅうちょう
山羊髯編輯長
夢野 久作
Lesen Sie 山羊髯編輯長 (やぎひげへんしゅうちょう) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.441 Zeichen · 102 Bildschirme
「お刈りになりますので……」
と前こごみになって吾輩の顔を覗き込む拍子に、その白い仕事着の懐中(ふところ)から、何ともいえない芳香がホンノリと仄(ほの)めき出た。
馬鹿馬鹿しい話だが吾輩の胸がチットばかりドキドキした。……江戸ッ子に似合わないイヤ味な野郎だな……とアトからやっと気が付いた位だ。
「失礼ですが旦那、東京の方で……」
若い親方が吾輩の首の附根の処でチョキチョキと鋏(はさみ)を鳴らし初めた。
「ウン。これでも江戸ッ子のつもりだがね」
「東京はドチラ様で入らっしゃいますか」
少々言葉付きが変態である。江戸前の発音とアクセントには相違ないが、語呂(ごろ)が男とも女とも付かない中途半端だ。しかし愛嬌者と聞いたから一つ話相手になってやろうか……気分の転換は無駄話に限る……事によると隣家(となり)の迷宮事件のヒントになる事を聞き出すかも知れない……と気が付いたから出来るだけ気軽く喋舌(しゃべ)り初めた。
「東京だってどこで生れたか知らねえんだ。方々に居たもんだから……親代々の山ッ子だからね」
「恐れ入ります」
「君も東京かい」
「ヘエ……」
と云ったが言葉尻が聊(いささ)か濁った。