Japanische Klassiker mit Furigana
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しまばらしんじゅう
島原心中
菊池 寛
Lesen Sie 島原心中 (しまばらしんじゅう) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.293 Zeichen · 29 Bildschirme
僕らは、引き上げようとして、俥が来るのを待っていたときです。臨検中は、私人が二階へ上るのを、一切禁じてあったのですが、もうすべてが終ったので、家人の上るのを許したのです。すると、待ち構えていたようにいちばんに上って来たのは、さっき見かけたこの家のお主婦なのです。
僕の顔を見ると、平蜘蛛のように、お辞儀をしながら、そのくせ、額ごしに、冷たい目でじろじろ見ていたかと思うと、いいにくそうに、
『旦那はん。あの指輪、取っても大事おまへんか』と、こういうのです。
『指輪! 指輪が、どうしたのだ』
お主婦は、ちょっと追従笑いをしていましたが、
『へえ。あの子供がはめておりますんで』
僕はそうきいたときに、妙な悪感を感ぜずにはいられなかったのです。
『じゃ、あの死体の指にはいっている指輪を欲しいというのだな』
『へえ! さよで』
僕は、頭から怒鳴りつけてやりたいと思ったのです。が、しかし、検事としての理性が僕の感情を抑えたのです。死体から、指輪を剥ぎ取るということ、それは普通な人情からいえば、どんな債権債務の関係があるにしたところで人間業ではないような恐ろしいことです。