Japanische Klassiker mit Furigana
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しまばらしんじゅう
島原心中
菊池 寛
Lesen Sie 島原心中 (しまばらしんじゅう) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.293 Zeichen · 29 Bildschirme
『お前、その指輪を、どうするのだ』
お主婦は、おどおどしながら、
『あの子供に、借金が仰山ありますけに、これでも売って、足しにしようと思うているのです』
『そうか。じゃ、誰かに売るんだな。売るのなら俺に売ってくれんか。何程ぐらいするんだ。十円なら安くないだろう』
『へえへえ。結構どす。けど、何やってこんなものをお買いになるのどす』
『まあ! いい』
そういって、僕はその指輪を買ったのです。
そのとき、ちょうど俥がやって来たのです。僕は、立ち上ると、お主婦が、不思議そうに見ているのもかまわず、錦木の部屋へ入って行ったのです。そしてお主婦から買い取った指輪を、元の瘠せ細った指に入れてやったのです。もう、十一月の半ばであるのに、死体の上に、あせためりんす友禅の単衣しか掛けてないのが、何だか薄ら寒そうに見えたのです。が、顔だけはまことに、眠るがごとく目を閉じていたのが、そのときの僕には、何よりの心やりでした。
僕は、僕の後から、僕が何をするのだろうと、おずおず見に来たお主婦に叱りつけるようにいったのです。
『いいかい。この指輪は、錦木のものじゃない。俺のものだぞ。