Japanische Klassiker mit Furigana
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あらし
嵐
島崎 藤村
Lesen Sie 嵐 (あらし) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.007 Zeichen · 108 Bildschirme
」
こう切り出した。
「こないだ買ったばかりじゃないか。」
「だって、足りないものは足りないんだもの。絵の具がなけりゃ、何も描けやしない。」
と、三郎は不平顔である。すると、次郎はさっそく弟の言葉をつかまえて、
「あ――またかじるよ。」
この次郎の串談が、みんなを吹き出させた。
私は子供らに出して見せた足をしまって、何げなく自分の手のひらをながめた。いつでも自分の手のひらを見ていると、自分の顔を見るような気のするのが私の癖だ。いまいましいことばかりが胸に浮かんで来た。私はこの四畳半の天井からたくさんな蛆の落ちたことを思い出した。それが私の机のそばへも落ち、畳の上へも落ち、掃いても掃いても落ちて来る音のしたことを思い出した。何が腐り爛れたかと薄気味悪くなって、二階の部屋から床板を引きへがして見ると、鼠の死骸が二つまでそこから出て来て、その一つは小さな動物の骸骨でも見るように白く曝れていたことを思い出した。私は恐ろしくなった。何かこう自分のことを形にあらわして見せつけるようなものが、しかもそれまで知らずにいた自分のすぐ頭の上にあったことを思い出した。
その時になって見ると、過ぐる七年を私は嵐の中にすわりつづけて来たような気もする。