Japanische Klassiker mit Furigana
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あらし
嵐
島崎 藤村
Lesen Sie 嵐 (あらし) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.007 Zeichen · 108 Bildschirme
いつのまにか末子は黒板の前を離れて、霜どけのしている庭へ降りて行った。
「次郎ちゃん、芍薬の芽が延びてよ。」
末子は庭にいながら呼んだ。
「蔦の芽も出て来たわ。」
と、また石垣の近くで末子の呼ぶ声も起こった。
遠い山地のほうにできかけている新しい家が、別にこの私たちに見えて来た。こんな落ちつかない気持ちで今の住居に暮らしているうちにも、そのうわさが私たちの間に出ない日はなかった。私は郷里のほうに売り物に出た一軒の農家を太郎のために買い取ったからである。それを峠の上から村の中央にある私たちの旧家の跡に移し、前の年あたりから大工を入れ、新しい工事を始めさせていた。太郎もすでに四年の耕作の見習いを終わり、雇い入れた一人の婆やを相手にまだ工事中の新しい家のほうに移ったと知らせて来た。彼もどうやら若い農夫として立って行けそうに見えて来た。
いったい、私が太郎を田舎に送ったのは、もっとあの子を強くしたいと考えたからで。土に親しむようになってからの太郎は、だんだん自分の思うような人になって行った。それでも私は遠く離れている子の上を案じ暮らして、自分が病気している間にも一日もあの山地のほうに働いている太郎のことを忘れなかった。