Japanische Klassiker mit Furigana
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あらし
嵐
島崎 藤村
Lesen Sie 嵐 (あらし) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.007 Zeichen · 108 Bildschirme
そのころの太郎はようやく小学の課程を終わりかけるほどで、次郎はまだ腕白盛りの少年であった。私は愛宕下のある宿屋にいた。二部屋あるその宿屋の離れ座敷を借り切って、太郎と次郎の二人だけをそこから学校へ通わせた。食事のたびには宿の女中がチャブ台などを提げながら、母屋の台所のほうから長い廊下づたいに、私たちの部屋までしたくをしに来てくれた。そこは地方から上京するなじみの客をおもに相手としているような家で、入れかわり立ちかわり滞在する客も多い中に、子供を連れながら宿屋ずまいする私のようなものもめずらしいと言われた。
外国の旅の経験から、私も簡単な下宿生活に慣れて来た。それを私は愛宕下の宿屋に応用したのだ。自分の身のまわりのことはなるべく人手を借りずに。そればかりでなく、子供にあてがう菓子も自分で町へ買いに出たし、子供の着物も自分で畳んだ。
この私たちには、いつのまにか、いろいろな隠し言葉もできた。
「あゝ、また太郎さんが泣いちゃった。」
私はよくそれを言った。少年の時分にはありがちなことながら、とかく兄のほうは「泣き」やすかったから、夜中に一度ずつは自分で目をさまして、そこに眠っている太郎を呼び起こした。