Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あらし

嵐

島崎 藤村

Lesen Sie 嵐 (あらし) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.007 Zeichen · 108 Bildschirme

Aozora Bunko

私の目にはまだ、六畳に二畳の二階が残っている。壁がある。障子がある。ごちゃごちゃとした町中の往来を隔てて、魚を並べた肴屋の店がその障子の外に見おろされる。向かい隣には、白い障子のはまった下町風の窓も見える。そこは私があの山の上から二度目に越して行った家の二階で、都会の空気も濃いところだ。かつみさん夫婦がかわるがわる訪ねて来て、よく登って来たのもその二階だ。そこに私は机を置いて、また著作にふけったが、そのころに私の書いたものが子供らの母さんの女学校時代の友だちのうわさにも上ったかして、そういう昔なじみの家庭を見に行って帰って来るたびに、いろいろ友だちから冷やかされたことだの、「お富さん(子供らの母さん)もずいぶん人がいい、あんなことを書かれて、黙っている細君があるものか。」と言われたことだの、それをあの母さんが私に話してみせた。でも、そういう人は私の書いたものが旧い友だちのうわさに上るというだけにも満足して、にわかに自分の夫を見直すような顔つきであったには、私も苦笑せずにはいられなかった。そのころの私が自分の周囲に見いだす著作者たちはと言えば、そのいずれもが新聞社に関係するとか、学校に教鞭を執るとか、あるいは雑誌の編集にたずさわるとかして、私のように著作一方で立とうとしているのもめずらしいと言われた。