Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんなのしょうがい
嵐・ある女の生涯
島崎 藤村
Lesen Sie 嵐・ある女の生涯 (あるおんなのしょうがい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.846 Zeichen · 96 Bildschirme
てもそういう風にばかり話して来たが、実はあの不幸な娘のこの世に生れ落ちる日から最早ああいう運命の下にあったとは、旦那だけは思い当ることもあったろうと。そればかりではない、彼女自身にも人には言えない深傷を負わせられていた。彼女は長い骨の折れた旦那の留守をした頃に、伜の娵としばらく一緒に暮した月日のことを思出した。その時は伜が側に居なかったばかりでなく、娵まで自分を置いて伜の方へ一緒になりに行こうとする時であった。
「俺はツマラんよ」と彼女の方でそれを娵に言って見せて、別れて行く人の枕許でさんざん泣いたこともあった。
「お母さん、そんなにぶらぶらしていらっしゃらないで、ほんとうにお医者さまに診て貰ったらどうです」と別れ際に慰めてくれたのもあの娵だった。どうも自分の身体の具合が好くないと思い思いして、幾度となく温泉地行なぞを思い立ったのも、もうあの頃からだ。けれども彼女が根本からの治療を受けるために自分の身体を医者に診せることだけは避け避けしたのは、旦那の恥を明るみへ持出すに忍びなかったからで。見ず知らずの女達から旦那を通して伝染させられたような病毒のために、いつか自分の命の根まで噛まれる日の来まいものでもない、とは考えたばかりでも恐ろしいことであった。