Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるおんなのしょうがい

嵐・ある女の生涯

島崎 藤村

Lesen Sie 嵐・ある女の生涯 (あるおんなのしょうがい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.846 Zeichen · 96 Bildschirme

Aozora Bunko

唯、幌の覗き穴を通して、お玉を乗せた俥の先に動いて行くのと、町の曲り角へでも来た時に前後の車夫が呼びかわす掛声とで、広々としたところへ出て行くことを感じた。さんざん飽きるほど乗って、やがて俥はある坂道の下にかかった。知らない町の燈火は夜見世でもあるように幌の外にかがやいた。俥に近く通り過ぎる人の影もあった。おげんは何がなしに愉快な、酔うような心持になって来た。弟も弟の子供達も自分を待ちうけていてくれるように思われて来た。昂奮のあまり、おげんは俥の上で楽しく首を振って、何か謡曲の一ふしも歌って見る気に成った。こういう時にきまりで胸に浮んで来る文句があったから、彼女はそれを吟じ続けて、好い機嫌で坂を揺られて行った。しまいには自分で自分の声に聞き惚れて、町の中を吟じて通ることも忘れるほど夢中になった。

漸く俥はある町へ行って停った。

「御隠居さん、今日はお目出度うございます」

と祝ってくれる車夫の声を聞いて、おげんは俥から降りた。

その時はおげんもさんざん乗って行った俥に草臥れていた。早く弟の家に着いて休みたいと思う心のみが先に立った。玄関には弟の家で見かけない婆やが出迎えて、