Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんなのしょうがい
嵐・ある女の生涯
島崎 藤村
Lesen Sie 嵐・ある女の生涯 (あるおんなのしょうがい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.846 Zeichen · 96 Bildschirme
そこには旧い親戚の家もある。そこの古い寺の墓地には、親達の遺骨も分けて納めてある。埼玉気分をそそるような機場の機の音も聞えて来ている。お三輪はほんの一時落ちつくつもりで伜の新七が借りてくれた家に最早一年も暮して来た。彼女は、お富や孫達を相手に、東京の方から来る好い便りを待ち暮した。
一年前の大きな出来事を想い起させるような同じ日の同じ時刻も、どうやら、無事に過ぎた。一しきりの沈黙の時が過ぎて、各自の無事を思う心がそれに変った。日頃台所にいて庖丁に親しむことの好きなお三輪は、こういう日にこそ伜や親戚を集め、自分の手作りにしたもので一緒に記念の食事でもしたいと思ったが、それも叶わなかった。親戚も多く散り散りばらばらだ。お三輪と同じように焼出された親戚の中には、東京の牛込へ、四谷へ、あるいは日暮里へと、落ちつく先を尋ね惑い、一年のうちに七度も引越して歩いて、その頃になってもまだ住居の定まらない人達すらあった。
お三輪は思い出したように、仮の仏壇のところへ線香をあげに行った。お三輪が両親の古い位牌すら焼いてしまって、仏壇らしい仏壇もない。何もかもまだ仮の住居の光景だ。