Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんなのしょうがい
嵐・ある女の生涯
島崎 藤村
Lesen Sie 嵐・ある女の生涯 (あるおんなのしょうがい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.846 Zeichen · 96 Bildschirme
小竹とした暖簾の掛っていたところは仮の板囲いに変って、ただ礎ばかりがそこに残っていた。香、扇子、筆墨、陶器、いろいろな種類の紙、画帖、書籍などから、加工した宝石のようなものまで、すべて支那産の品物が取りそろえてあったあの店はもう無い。三代もかかって築きあげた一家の繁昌もまことに夢の跡のようであった。その時はお三輪も胸が迫って来て、二度とこんな焼跡なぞを訪ねまいと思った。その足でお三輪は芝公園の休茶屋の方へも寄って来たが、あの食堂もまだ開業の支度最中であった。新七、お力夫婦の外に、広瀬さんという人も加わって、四人で食器諸道具の相談に余念もなかった頃だ。この広瀬さんは一時は小竹の家に身を寄せていたこともあり、お力なぞもこの人に就いて料理というものに眼が開いたくらいだから、そういう人が心棒になっての食堂なら、あるいは成り立ちもするかとお三輪にも思われた。
「それにしても、小竹の店はどうなるだろう。新七はどういう気でいるんだろう」
そこまで考えて行くと、お三輪は茫然としてしまった。
単調な機場の機の音は毎日のようにお三輪の針仕事する部屋まで聞えて来ていた。