Japanische Klassiker mit Furigana
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かわばたやなぎ
川端柳
豊島 与志雄
Lesen Sie 川端柳 (かわばたやなぎ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.612 Zeichen · 6 Bildschirme
一人の人にも出逢わなかった。それからやがて、賑やかな大通りに出た。大商店の飾窓がずらりと並んで、明るい灯火が連って、街路は掃き清められていた。ただ、馬車も電車も自動車も通らず、人影一つなく、美しく光り輝いているきりだった。
「そろそろ、初めましょうか。」
「ああ、よかろう。」
そこで私達は、或る大きな呉服屋にはいっていった。やはり誰もいなかった。がらんとした明るい広間に、陳列棚が縦横に並んでいた。その棚に堆高く積んである布の中から、よさそうなのを選んで、私達は万引を初めた。
愉快だとも爽快だとも云いようのない、素晴らしい気持だった。自分の気に入ったものをちょいちょいとかっさらう。そのことが面白かったのか、または、そういうことの出来る自由さが面白かったのか、兎に角、ぞっとするような気持だった。勿論、見ている人は誰もいなかった。然し人がいようがいまいが、そんなことはどうでもよかった。自由に勝手に盗み取るのが、震え上るほどの嬉しさだった。
やがて私達は、万引した品物を風呂敷に包んで、その建物から出た。広い街路はやはりひっそりとしていたが、先刻より灯火の数が少くて、ずっと薄暗くなっていた。