Japanische Klassiker mit Furigana
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じゅんさじしょく
巡査辞職
夢野 久作
Lesen Sie 巡査辞職 (じゅんさじしょく) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.907 Zeichen · 63 Bildschirme
一知を従えて山の中を分けて行く僅の間に「コイツが犯人に相違ない」という確信が、草川巡査の脳髄の中へグングンと高潮して来るのを、どうする事も出来なくなった。それに連れて草川巡査の意識の中には、
――何という図々しい奴だろう――
――絶体絶命の動かぬ証拠を押える迄は、俺は飽く迄も知らん顔をしてくれよう――
といったような極度に意地の悪い考えと、
――コンナ柔和な、美しい、親孝行で評判の模範青年に疑いをかけたりするのは、俺のアタマがどうかなっているせいじゃないか知らん――
――万一、実際の証拠が揚がらないとすれば、コンナにも美しい、若い夫婦の幸福を出来る限り保護してやるのが、人間としての常識ではないか――
といったような全然、相反する二つの考えが、草川巡査の神経の端々を組んず、ほぐれつ、転がりまわり初めたのであった。
太陽はまだ地平線を出たばかりなのに、草川巡査と一知が分けて行く森の中には蝉の声が大浪を打っていた。その森を越えた二人は無言のまま、直ぐ鼻の先の小高い赤土山の上にコンモリと繁った深良屋敷の杉の樹と、梅と、枇杷と、橙と梨の木立に囲まれている白い土蔵の裏手に来た。