Japanische Klassiker mit Furigana
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じゅんさじしょく
巡査辞職
夢野 久作
Lesen Sie 巡査辞職 (じゅんさじしょく) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.907 Zeichen · 63 Bildschirme
寝巻浴衣の袖で眼を拭い拭い潤んだ声で云った。
「……あきらめて……おります……」
草川巡査は、そのまま暫く考え込んでいたが、やがて軽いタメ息をしてうなずいた。
「ふうむ。成る程のう……しかしこれ位の鍵を一つ開ける位、窃盗常習犯にとっては何でもないじゃろう」
そう云って、今一度タメ息をしいしい一知青年をかえりみた。
「……一緒に来てみい。奥座敷へ……」
閉め切った古い雨戸の隙間と、夥しい節穴から流れ込む朝の光りに薄明るくなっている奥座敷に来てみると、成る程無残な状態であった。滅多にコンナ事に出会わない村医の神林先生が周章て逃げ出して行ったのも、無理がなかった。
古ぼけた蚊帳の中で、別々の夜具に寝ていた老夫婦は、殆んど同時に声も立て得ぬ間に絶息したものらしい。父親の牛九郎の方は仰臥けしたまま、禿上った前額部の眉の上を横筋違いに耳の近くまでザックリと割られて、鶏の内臓みたような脳漿がハミ出している。また姑のオナリ婆さんは俯伏せになって、枕を抱えて寝ていたらしく、後頭部を縦に割付けられていたが、これは髪毛があるので血が真黒に固まり付いている上に、二人の枕元の畳と蒲団の敷合わせが、血餅でつながり合って、小さな堤防のように盛上っていた。