Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さこんのいかり

左近の怒り

坂口 安吾

Lesen Sie 左近の怒り (さこんのいかり) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.454 Zeichen · 95 Bildschirme

Aozora Bunko

「原稿さがしてましたので、お待たせいたしました。私、読んだ記憶があるんですけど、いまちょッと見当りませんのでね。お待ち下されば、さがしますけど」

「そうですね。せっかく書いたんだから、さがしていただいて持って帰りましょうか」

「では、どうぞ、上ってお待ち下さいませ」

二階の奥へ通された。そこに五十がらみの小男がいた。左近の顔をチラチラうかがっていたが、娘と小僧が原稿さがしに別室へ去ると、立って近づいて、左近の前へドサリと原稿を一山投げだした。

「方々からこんなに原稿送ってくるんでね。キミ一人じゃないんだ。見てごらん。面白いぜ。しかし、出しても売れねえや」

手にとってみると、一つは「強盗一代記」次のは「節食健康法」とある。

「それ書いたのは有名な強盗なんだ。キミの密輸船くらいじゃアね」

「なるほど。上には上がありますね」

「キミもしかし相当な悪事を重ねたね」

「悪事ではありません。海はボクラの家というだけです」

「キミはいくつだい」

「満二十八」

「海軍出身かい」

「予科練です。父母が戦災で死にましたので、終戦のとき、同じような仲間と徴用の漁船で逃げだしたまま密輸やりだしたんです」